本項では以下の内容を解説しています。
反射の法則(law of reflection)とは、光が異なる物質の境界に入射したときに、入射光と反射光の進行する方向の関係を説明する法則です。
図1に、入射光が物質の境界で反射される様子を図示します。
このとき、入射する光線の入射角を\(\large{\theta_i}\)、反射する光線の反射角を\(\large{\theta_r}\)とすると、入射光線と反射光線には以下の関係が成り立ちます。
本章では、物体を鏡により観察したときの様子を反射の法則によって説明します。
図2は平面鏡に反射した物体を観察したときの、光線の様子を描いた図です。
鏡に写った物体を観察したとき、物体Aから鏡に入射した光は、図中の点Pで反射し、観察者に到達します。
このとき、反射の法則により、入射角\(\large{\theta_i}\)と反射角\(\large{\theta_r}\)が等しくなり、図のように鏡面を境界とした対称的な位置に、物体の像が作られます。
観測者から見ると、観測者から点Pまでの直線を延長した先に、物体の像が見えます。この観察される像を虚像といいます。
観測者は、この虚像の位置にあたかも物体が存在しているように見えます。
本章では、反射の法則に関連した計算問題について解説します。
【問題】
図3のように鏡面に入射した光線が点Oにおいて入射角\(\large{\theta_i}\)、反射角\(\large{\theta_r}\)で反射している。
鏡面を点\(\large{P}\)を中心に角度\(\large{a}\)だけ回転させたとき、鏡面から反射される角度は元の角度\(\large{\theta_r}\)からどれだけ回転するか計算せよ。
【回答と解説】
図4に点\(\large{P}\)を中心に角度\(\large{a}\)だけ回転させた様子を示します。
鏡面を角度\(\large{a}\)だけ回転させると、鏡面の法線が角度\(\large{a}\)だけ変化し、入射角が\(\large{\theta_i+\alpha}\)となります。 また、反射の法則より、入射角と反射角は等しいので、反射角も\(\large{\theta_r+\alpha}\)となります。
結果的に、反射光線は元の角度から\(\large{2a}\)だけ変化することになります。
【問題】
図5のように2枚の鏡面を直交するように張り合わせた場合を考える。
このとき、鏡面1の入射光線と鏡面2の反射光線の角度がどのような関係になるか計算せよ。
【回答と解説】
図6に、鏡面1に光線を入射したときの光線の経路を図示します。
鏡面1への入射角を\(\large{\alpha}\)とすると、反射の法則から反射角も\(\large{\alpha}\)となります。
ここで、図中の三角形\(\large{OPQ}\)に着目すると、\(\large{\angle OPQ = 90^{\circ}- \alpha}\)となることから、\(\large{\angle PQO = \alpha}\)となります。 よって、鏡面2における入射角と反射角は\(\large{90^{\circ}- \alpha}\)となることが分かります。
したがって、鏡面1と鏡面2における入射角、反射角を足し合わせると、入射角に依存せず\(\large{180^{\circ}}\)となります。
以上より、直交する鏡面に光線が入射すると、常に入射光線の方向に反射光線が戻っていくことが分かります。
図7に任意の角度で入射光線の方向に反射光線が戻っていく様子を示します。
上記のように鏡面を直交させて張り合わせた光学素子をコーナーキューブといいます。
実際のコーナーキューブは3面の鏡面がそれぞれ直交するように配置され、立方体となっています。
コーナーキューブの応用としては、測量の分野で使用されています。例えば、アポロ宇宙船は月面にコーナーキューブを利用した反射板を設置しています。
地球から月面に大出力パルスレーザーを照射し、その光が戻るまでの時間から月と地球の距離を計測しています。
・(1)Eugene Heght『原著5版 ヘクト 光学Ⅱ』 2019年6月発行, 第4章 4.3.1 pp174~180
・(2)鶴田 匡夫『光の鉛筆』 1986年1月15日発行, 第16 光のブーメラン pp104~109